「麻酔」は苦手な方が多いと思います。
注射と言うだけで、飛び上がる人もいます。特に子供は嫌がります。
実を言うと、私も苦手です。
しかし、大きな虫歯の治療、神経の治療、抜歯の時には麻酔なしでは処置できません。
「歯医者さんって患者の痛み分かっていないのでは?」という疑問を投げかけられることもあります。
患者さんが痛がっているのに、平気な訳ありません。
こちらの心拍数は上がりっぱなしです。
痛みが解っているから麻酔をします。
◇おかしな質問
当医院では、「麻酔どうします?」と、お聞きすることがあります。
聞かれたほうは「何で?」と、思われるかもしれません。
あまり大きくないケースや、しびれた感覚が苦手な方にはお聞きすることが多いです。
あと、子供さんは麻酔のしびれを痛みと感じることが多いようです。
上の前歯の麻酔は鼻までしびれた感覚になることもありますから特に子供さんは麻酔が効いている間は用心しないと、鼻をほじって鼻血を出す事もあります。
唇を咬んでしまうだけではないのです。
麻酔薬も、一般の飲み薬と同じようにリスクはあります。リスクというと怖がられるかもしれませんが、何にでもつきものです。
小さい子供さんには、なるべく麻酔したくないというのが本心です。
しかし、痛みに敏感な方には、「麻酔しましょう~」と、最初から言います。
私の医院のスタッフに “超痛がりさん” がいます。彼女を見ていると、いろんな意味で勉強になります。痛がり方は十人十色なのでその患者さんに合わせます。ケースバイケースです。
◇麻酔がきかない
「麻酔が効かなくて痛かった、歯医者行きたくない」という声をお聞きします。
私自身、これまで麻酔をしたのにも関わらず効果が得られず困った事はあります。なぜ効かないのでしょうか?
1.解剖学的な問題
特に、下の歯の奥歯は聞きにくいです。これには、あごの骨の形、骨の厚み、密度が関係しています。あと、付け加えるとしたら歯の根の長さも関係します。
下の奥歯は顎の骨の表面構造が厚く、麻酔液が歯の根っこの一番先に浸透しにくいので、効きにくいのです。
それに比べ、上の歯や下の前歯は、比較的効きやすいです。下の奥歯の場合は歯の周囲に何回か麻酔を打つことはあります。人によっては、何本も打たれたと勘違いされる方もいらっしゃいますが、麻酔液の量は普段とは変わりませんので、御安心ください。
2.精神的な緊張と局所的な問題
痛みがあるときは、神経は鋭敏になっています。また、痛みに対して警戒していますので麻酔が効きにくくなります。
このような場合、麻酔をする前に緊張をほぐすように努力はしています。
しかし、完全には困難です。また、以前に麻酔が効かず痛い記憶がある場合にも効きにくいように思います。
また、痛みが出ていると、局所に炎症もありますので麻酔液が非常に効きにくくなっています。炎症があると組織が酸性になり麻酔薬はアルカリ性なので中和されて効果が出にくいのです。
少し、ややこしく言うと組織が酸性だと麻酔薬のアルカリ性塩基の部分が遊離しにくいので効きにくいのです。あと、腫れている時も同じように効きにくいです。
3.体質
ごく稀ですが、本当に効きにくい体質の方がおられます。上の歯でも効かない、効いたと思ってもすぐ効果がなくなる方もいらっしゃるようです。
◇痛くない麻酔
良く効く表面麻酔を使い、使う針も一番細いゲージを使用します。それ以外の小技も少し使います。
あと、最新型の電動式注射器は、本当に良くできています。初めてデジタル一眼レフを使った時のような衝撃でした。
形からいっても電動式は注射器の形をしていないので、小さいお子さんには有効ですね。
当院では、痛くない麻酔を心がけています。
でも、、痛くなる前に受診してくださいね。